風の盆
立山を崇むる八尾水の秋
うすやみのつつむやさしさ白芙蓉
秋の鮎焼かれ芳香放ちけり
月代や男流しのひとりゆく
稲びかり町むらさきに浮かみけり
秋驟雨洗ひたてたる石畳
三味の音や月のひかりの潦
踊る手に花街のなごり鏡町
踊笠くちびる濡れてゐたりけり
夜流しの過ぎて深まる虫の闇
身に入むや一夜の床几譲りあひ
月天心「風」の一字を帯に染め
闇に来て闇をひきゆく踊かな
露けしや問はず語りに相槌を
母許へ泣きにゆくかに風の盆
新涼や八尾の和紙の麻模様
初秋の旅信に代ふる地酒かな
ひとむらの風に追はるる赤とんぼ
夕霧や駅のホームのおわら節
風の盆身ぬちの風を鎮めけり